伴奏を作るのに必要な知識-調性/コード進行/代理コード/関係調

伴奏を作るには、コード進行と代理コード、関係調などの知識を身に付けましょう

コード進行を展開させる終止形の仕組み

コード進行を別のコード進行に展開させる仕組みを知らないと、ポップス系の楽曲における伴奏を作る事はできません。

なぜなら、ポップス系の楽曲の伴奏と言うのは、一つのコード進行だけで作られている訳ではないからです。

※ もちろん、1つのコード進行だけを使っているポップス系の楽曲も多くありますが、そうした楽曲では、ドラムのビートや伴奏の音色を変化させる、といったアレンジを加えています。

ただ、そうしたテクニックは、作曲初心者の方には少し難しいと思いますので、ここでは割愛させていただきます。

複数のコード進行を繋げるには色々な方法がありますが、その中でも初心者の方にも簡単に出来る繋げ方が、「終止形」の一種である「半終止」を使ったコードのつなげ方です。

終止形とは?

「終止形」(しゅうしけい)というのは、コード進行のカデンツをどういう感じで終わらせるのか、という事を表す音楽用語です。

例えば、「CFGC」というコード進行であれば、コード進行の終わりが一定の安定感をもっているように感じられると思います。

CFGC-完全終止系

CFGC-完全終止系

それは、ドミナント・コードから、トニック・コードへ移動して、コード進行が完全に終了した、という文脈の終わり方になっているからです。

このように、コード進行が完全に終了したのか、それともまだ持続するのか、といったコード進行の流れは、「終止形」の種類によって決まってきます。

ちなみに、「CFGC」というコード進行のように、ドミナントからトニックへ移動して終わるコード進行の場合、「完全終止」、または「ドミナント終止」という終止形になります。

半終止とは?

「半終止」というのは、終止形の一種で、コード進行の最後が「ドミナント・コード」で終わる形の事です。

例えば、「CFDmG」というコード進行のように、コード進行の最後がドミナント・コードで終わる場合、「半終止」のコード進行だと言えます。

CFDmG-半終止

CFDmG-半終止

このコード進行を聴いてみると分かりますが、コード進行の最後が「ドミナント・コード」で終わっているので、コード進行が全く終わっていない雰囲気になります。

そのため、コード進行がまだ持続しそうな時や、別のコード進行へ展開させる時などには「半終止」の状態にしたコード進行を使ったりします。

先ほどの、「CFGC」を繰り返した伴奏で、AメロからBメロへ展開する手前のコード進行だけ、「CFDmG」というコード進行に変えると、それまでの流れが程よく変化して、最終的に半終止で次の展開へ繋げられるようになります。

半終止に代理コードは使えない

注意しなくてはいけないのは、半終止のドミナント・コードの代わりに、ドミナント・コードの代理コードである「Ⅲ」や「Ⅶ」のコードを使う事は出来ないという点です。

実際に、先ほどの「CFDmG」と言うコード進行の最後のドミナント・コードを、代理コードの「Ⅲ」や「Ⅶ」に変更してみても、半終止の時のコードの流れにはならないことが分かると思います。

代理コードを使った半終止(Ⅲのコード)

代理コードを使った半終止(Ⅲのコード)

代理コードを使った半終止(Ⅶのコード)

代理コードを使った半終止(Ⅶのコード)

ですので、半終止を使ってコード進行の展開を行う際には、ドミナント・コードのみ有効であるという事を忘れずに、ドミナントコードをコード進行の最後に使うようにしましょう。

関係調の仕組みを使ってコード進行を作る

関係調というのは、ある調と別の調を比較した時の関係性を表す言葉です。

関係調は大きく分けると「近親調」と「遠隔調」の二種類があります。

近親調には以下のものがあります。

コード進行を作る際には、これらの近親調におけるダイアトニックコードを借用和音として使用したりします。

ただ、平行調と言うのは、同じ音を使う長調短調の関係性になっているので、同じコードを使ってコード進行を作る事が出来ます。

平行調とは?

平行調とは、ある長調で使う特定の音と同じ音を使う短調、または、ある短調で使う特定の音と同じ音を使う長調の事です。

例えば、へ長調では「ファソラシ♭ドレミファ」という音を使います。

ヘ長調で使う音

ヘ長調で使う音

この「ファソラシ♭ドレミファ」という音を使う短調に「ニ短調」があります。

ニ短調で使う音

ニ短調で使う音

ニ短調の場合、第一音が「レ」なので、「レミファソラシ♭ドレ」になりますが、使っている音は「ヘ長調」と同じです。

このように、使う音が同じ長調短調の関係を「平行調」と言います。

コード進行で平行調のコードを使う

コード進行の中においては、平行調長調短調のコードを使っていることになります。

なぜなら、ある長調平行調の関係にある短調は、その長調のダイアトニックコードと同じコードを使うからです。

ですので、長調のコード進行も、平行調短調にとってのコード進行と言えます。

ですが、やはり、短調長調では、コード進行の使い方が若干違います。

長調の場合には、基本的に明るい響きのコード進行になるように、ダイアトニックコードを組み合わせて、短調の場合には、基本的に暗い響きのコード進行になるようにダイアトニックコードを組み合わせます。

ただ、どちらも同じ音を使い、同じコードを使っているので、調性の関係上、ある長調のコード進行から、平行調短調のコード進行へ移動しても、コードの繋がりとして自然な流れになります。

ですので、平行調長調短調を意識してコード進行を構成すれば、長調のコード進行だった状態から、暗い短調のコード進行へ簡単につなげる事が出来ます。

伴奏を作る際には、AメロやBメロといった楽曲構成も意識してコード進行を展開させますが、その際に、平行調の仕組みを使ってコード進行を繋げれば、一気に別の雰囲気のコード進行へ展開できますので、この「平行調の仕組み」についても覚えておきましょう。

コード進行を作るのに重要な3つの機能

伴奏を作るために、ダイアトニックコードの各コードを組み合わせてコード進行を作る際に、ただ適当にダイアトニックコードを組み合わせるだけだと、綺麗な流れのコード進行を作る事が出来ません。

綺麗な流れのコード進行を作るには、ダイアトニックコードの3つのコードに備わっている「トニック・サブドミナントドミナント」という機能について理解した上で、コードの組み合わせ方を考えます。

ただ、その3つの機能について学習する前に、ダイアトニックコードのディグリーネームでの呼び方を覚えましょう。

ディグリーネームとは?

ディグリーネームというのは、ダイアトニックコードの各コードに付けられる番号の事で、その番号はローマ数字で表記されます。

例えば、ハ長調のダイアトニックコードに「Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ・Ⅶ」というようにローマ数字で付けられる番号がディグリーネームになります。

ディグリーネーム

ディグリーネーム

ダイアトニックコードをディグリーネームで呼ぶことで、長調同士、短調同士であれば、同じディグリーネームのコードの組み合わせにして、移調しただけのコード進行が作られるようになります。

また、コード進行を組み合わせる際には、ディグリーネームで「Ⅰ」・「Ⅳ」・「Ⅴ」のコードに備わっている「トニック・サブドミナントドミナント」という機能が重要になります。

トニック・コードの機能

ディグリーネームが「Ⅰ」のコードには、「トニック」という機能があります。

「トニック」というのは、「主音」という意味で、その調における第一音の事です。

つまり、「トニック」という機能のコードは、その調における第一音を根音にしているコード、という事になります。

トニック・コードの機能

トニック・コードの機能

トニック・コードは、主音が根音のコードなので、ナチュラルメジャースケール、またはナチュラルマイナースケールと同じように、始まりと終わりに使うとしっくりくるコードとなっています。

機能としては、コード進行の中に安定感を与える機能となっています。

サブドミナント・コードの機能

ディグリーネームが「Ⅳ」のコードには、「サブドミナント」という機能があります。

サブドミナント」というのは、「下属音」という意味で、その調における第四音の事です。

つまり、「サブドミナント」という機能のコードは、その調における第四音を根音にしているコード、という事です。

サブドミナント・コードの機能

サブドミナント・コードの機能

サブドミナント・コードは、下属音が根音のコードなので、トニックコードから移動してきやすいコードとなっています。

※ 主音から下属音までの音程差は「完全四度」となっているので、主音から下属音への移動は、音同士の強い繋がりを感じられる「強進行」となっているからです。

また、サブドミナント・コードの構成音は、ダイアトニックコードの各コードの構成音と繋がりやすい音になっているので、サブドミナント・コードの機能としては、コード同士を繋げる機能になっています。

ドミナント・コードの機能

ディグリーネームが「Ⅴ」のコードには、「ドミナント」という機能があります。

ドミナント」というのは、「属音」と言う意味で、その調における第五音の事です。

つまり、「ドミナント」という機能のコードは、その調における第五音を根音にしているコード、という事です。

ドミナント・コードの機能

ドミナント・コードの機能

ドミナント・コードは、属音のコードなので、トニック・コードに移動しやすいコードになっています。

※ 属音から上の主音までの音程差は「完全四度」で、「強進行」となっているからです。

そのため、コード進行の最後を、ドミナント・コードからトニック・コードへ移動するパターンが多く使われます。

機能としては、トニック・コードへ移動して、コード進行の流れを終わらせる機能となっています。

既存のコード進行パターンを参考にする

「トニック・サブドミナントドミナント」の機能を覚えたら、とりあえず、コード進行を作ってみると良いと思いますが、さすがに初心者の方の場合、いきなりコード進行を作れと言われてもどうしていいか分からないと思います。

ですので、まずは、既存のコード進行パターンを参考にしてみるいいでしょう。

私自身が一番初めに覚えたのは「C・F・G・C」というコード進行パターンです。

コード進行パターン-CFGC

コード進行パターン-CFGC

このコード進行パターンは、とても単純で、トニック・サブドミナントドミナント・トニックというコードのカデンツをしっかりと踏まえた構成のコード進行になっています。

聴いた感じはとてもシンプルなので、単調でつまらないコード進行だと感じるかもしれませんが、「代理コード」を使う事で、このシンプルなコード進行もオシャレな雰囲気に変化させる事が出来ます。

代理コードとは?

「代理コード」というのは、コード進行の各コードの代わりに使えるコードの事です。

代理コードとして使えるコードは、コードの構成音が似ているコードになっています。

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トニック・コードの代理コード

「トニック・コード」であれば、「第一音・第三音・第五音」という構成音になっているので、ディグリーネームが「Ⅲ」と「Ⅵ」のコードが代理コードとして使う事が出来ます。

トニック・コードの代理コード

トニック・コードの代理コード

ディグリーネームが「Ⅲ」のコードの構成音は「第三音・第五音・第七音」となっていて、「Ⅵ」のコードの構成音は「第六音・第一音・第三音」となっています。

このように、トニック・コードと「Ⅲ」・「Ⅵ」のコードは、コードの構成音が似ているので、コード進行の中でトニック・コードの代理コードとして「Ⅲ」・「Ⅵ」のコードを使ったりする事が出来ます。

サブドミナント・コードの代理コード

また、サブドミナント・コードは、構成音が「第四音・第六音・第一音」となっていて、「Ⅱ」のコードの構成音は「第二音・第四音・第六音」、「Ⅵ」のコードの構成音は「第六音・第一音・第三音」となっているので、「Ⅱ」と「Ⅵ」のコードは、コード進行の中でサブドミナント・コードの代理コードとして使う事が出来ます。

サブドミナント・コードの代理コード

サブドミナント・コードの代理コード

ドミナント・コードの代理コード

ドミナント・コードは構成音が「第五音・第七音・第二音」となっていて、「Ⅲ」のコードの構成音は「第三音・第五音・第七音」、「Ⅶ」のコードの構成音は「第七音・第二音・第四音」となっているので、ドミナント・コードの代理コードとして「Ⅲ」と「Ⅶ」のコードをコード進行の中で使う事が出来ます。

ドミナント・コードの代理コード

ドミナント・コードの代理コード

先ほどの、「CFGC」というコード進行であれば、代理コードを使う事で、「Am・F・Em・C」というコード進行にしたり、「Em・Dm・G・Am」というコード進行にしたりする事が出来ます。

このように、代理コードを使う事で、単調でつまらないコード進行パターンであっても、スリリングで緊張感のあるコード進行パターンに変化させる事が出来るので、伴奏を作る際には、代理コードも使ってみましょう。